2014年5月9日金曜日

学校は監獄か:フーコー「監獄の誕生」

70年代後半に世界中に学校教育批判の嵐が起きました。この「監獄の誕生」という本もその流れで書かれたものです。タイトルは本来「監視と処罰」というもので、邦訳は副題の方がひっくり返って主題になっています。

学校、病院、監獄、工場というものが相互作用して互いに人間管理を学びあいながら手法を導入していったというもので、ざっくりいえば人間をを統計的人口と解剖学的身体という側面で行政的に管理するシステムの一環として学校、病院、監獄が存在し、目的は労働力として資本に統合することです。
一望監視システム

つまり国家の基本的な支えである教育、医療、刑罰、などの装置がはじめて人間を人間として労働市場に統合させることができるということです。

国家論ではないので具体的な事件に対する措置や身体に対する処置が記述されるだけですが、フーコーはこうした制度を支える言説として経済学、言語学、生物学を指定し、この三つの相互作用の派生として社会学、心理学、教育学、犯罪学をみなします。

そしてこうした学説と制度上の強制によって、異常、犯罪、逸脱、愚鈍、病気、狂気を矯正し、労働市場にとって「役に立つ」人間にするのです。

フーコーは国家を批判しているのではなく、西欧近代社会という特有の制度の、他の時代との違いを問題にしているのです。



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